御手洗はこちらです。

便所みたいなもんですね。

彼女と彼女の日常

「ねぇ、あたしの何処が好きなの」

その質問は今回のソレで72回目だ。
この二年と3ヶ月の間で72回、約13日に一回はそう問いかける。
それは、貴女がそうして確認をする周期が約二週間前後でやってくると言うことで、つまりは情緒が不安定になる時期であると言う事実。
これは私がどれほど愛を囁いても治ることは無かった。
何度先回って伝えても為すすべなく揺れてしまった。
だから、その質問の答えが私と貴女の関係性の中にはない事を知っていた。それでも聞かずにはいられないのは、やはり私達の関係性を客観視してしまう貴女自身の存在なのでしょうね。
なので、私はこの二年と3ヶ月の間同じ解答を出し続けているのだ。

「貴女が、貴女だからよ」

「いつも同じじゃんそれ、もっと具体的に言ってよぉ」

この解答に対して、そうして膨れながら拗ねるのは、36回目。
良くない兆候である。
何故ならば、その解答だけでは満足出来ない状態にあると言う事だからだ。
それだけでは鎮められないのだ。
そして、その質問に対する解答も私は一度も変えたことがない。

「そうね、髪、目、鼻、耳、口、首、肩、鎖骨、腕、肘、手、指、胸、腹筋、臍、局部、腰、臀部、太腿、膝、脛、足首、爪。私は貴女を構成する全ての要素が好きよ、大好きよ。もっと細かく掘り下げても良いのだけれど、少し帰りが遅くなるかもしれないわ。それでも良い?」

「はぁ……。分かった、分かりました、ありがとうございます。私は大変好かれております。本当にどうもありがとう!」

その少し諦めたようで、嬉しそうな顔も、いつもよく見る貴女の表情だ。
だから、最後に一つ、これは絶対に同じ解答を使わないで付け加えるのだ。

「ふふ、その綺麗な唇が大好きよ。キスしても良い?」

「あぁ、もう……。……今は……ダメ……。後でね」

「楽しみにしてるわ」

これで完璧。
これで元通り。
でも、私は知っている。これは根本的な解決にはなっていない事を。
私は今を壊さない為に、口三味線を弾いてとりあえずの蓋を用意しているだけ。
小狡いやり方だと、自分でもよくよく分かっているし、貴女がそれに気がついていない事も分かっている。
でも、まだ私は怖いのだ。
"その"貴女と向き合うには勇気があまりにも足りていない。
だからこうして、壊れないように、壊れなかった過去のリピートを壊れたラジカセが擦りすぎてテープが破れてしまうまで繰り返している。
そして、完全に使い物にならなくなるまで、そう時間がかからない事も、分かってしまっている。

「ねぇ、今度映画に行こうよ。見たかったやつがもうすぐ始まるの」

「いいわね、ジャンルは?」

「えーっとね、サスペンスホラー?ちょっと違うな。ホラーなんだけど、なんかちょっと違う。現実的?って言えばいいのかな。それがサスペンスホラー……?ごめん、言っててわかんなくなっちゃった。とりあえずホラー!」

「ホラーねぇ……。貴女ホラー苦手なのに、好きよね」

「え、でもわかんない?なんかこー、さ。怖いもの見たさって奴だよ。ギャーってなるんだけど、覗きたくなる!みたいなさ」

「ふふ、ぎゃーって、面白いわね。いつも目も耳も塞いで、見ない見ない見ないー、って呟く貴女は本当に可愛いわよ」

「いや、だって怖いんだもん!」

「はいはい、分かったわ。行きましょうね映画」

「あしらわれた、今適当にあしらったよね、根に持つからねあたし」

えぇ、そう。
怖いから一人で眠れない、なんて程のいい言い訳の一つ。
だから貴女は私とホラーを良く見るのよ。

私と眠る為にね。
まぁ、本当に怖いのも知っているけれど。

「可愛いわね、本当に」

「うぅー、嬉しい……けど、なーんかあやされてる気分になるんだよなぁ」

「えぇ、あやしているもの。何も間違ってないわ」

「……いつか絶対叫ばせてやる」

「ぎゃーって?」

「そしてその顔を恐怖に歪ませてやる……」

「ぎゃふん、位ならいつでも言ってあげるわよ」

「あ、今のそれ可愛い、もっかいやって」

「ぎゃふん」

「うわ、それ可愛い……動画撮っていい?」

「ごめんあそばせ、撮影は有料なの、ごめんなさいね。事務所通していただかないと」

「ケチだなー、だからモテないんだよ」

「貴女一人にモテていれば十分よ」

「……今のそれ、良い。すごく良い。もっかいお願い」

「うふ、二度は言わないわ。ケチなので」

「もー!」

自分の長い黒髪が、風と共にはたりはたりと散る。
この日常は、長くはないと知っている。
知ってはいるが、辞めるつもりも無い。
今は、ね。

「ね、お願い。もう一度だけ、言って?」

紅潮した頬でねだる姿は、あまりにも愛おしい。
だから、耳元に唇を寄せて、鼓膜に口付けが出来る程の距離で

「愛してる」

と、だけ。

 

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なんと言うか、特に言う事はありません。今パッと思いついた妄想を文字に起こしただけなので全然面白くないですねこれ。

まぁ、でも僕は常にこんな妄想ばっかしてるオタクですよと言う自己紹介の一つにでもなればいいですかね。

そんな感じでした。

以上です。