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御手洗はこちらです。

便所みたいなもんですね。

苺の後味

私は苺が好きでした。甘酸っぱいステキな味がする。

あの酸っぱさが、程よく甘さを引き立て、甘いだけでは終わらない、そんな果実。


「ただいま」

「おかえりなさい、お疲れ様」

私はちゃんと幸せだ。間違いなく、幸せだ。

しかし、求めた物と、今持っている物は違っている。

でも、人生なんてそんなもので、大人になると言うのは、別の物でもそれなりに満足できるようになる事なんだろうな、と悟ったふりをしてみたりする。

私は、そんな私で満足している。

何故なら、大人になったから。

「はい、コレ。プレゼント」

「わぁ、ありがとう」

「君によく似合うと思ってね、つい買ってしまったんだ」

彼は事あるごとにプレゼントを買ってきてくれる。それはとても価値のある事で、私はそれがとても嬉しかった。

でも、あの人なら、とつい思ってしまう時がある。

「高かったんじゃない、ごめんね、別に良かったのに」

ありがたそうに、それでいて当然のようには受け取らない。大人になるにつれ、学んだ処世術の一つだ。

「俺が君にしたかったんだよ、気にしないでくれ」

とても優しい人だ。

優しくて優しくて、私には勿体無いくらいに甘い。

「ありがとう」

そう笑う私は、ちゃんと笑えているかな。昔のように、嫌な笑顔になっていないかな。

あの人は、今ちゃんと笑えているかな。

「愛してるよ」

「私も」

これは嘘だ、確かにちゃんと好きではあると思う。でもきっと、愛してはいない。

お互いにそれにはきっと気付いてる。


あの人とは言うものの、これはただの元彼への未練なのだろう。でも私はあの人をそう呼びたくは無かった。何故だろうな、わからないけど「元彼」なんてカテゴリーに彼を入れるのはあの人に対してでは無く、自分が許せないのかもしれない。

酷く傷つけあった感傷と、溺れるほど愛し合った思い出と、今でも忘れられない事実だけが私に残っている。それだけは、捨てようにも捨てられなかった。

未練がましい、と言われても構わない。

私はそう言う物として扱っている。

あの人はプレゼントなんて、数えるくらいしかくれなかった。私はその3倍は渡したように思う。

でも、だからかな。

その一つ一つがとても嬉しかった、今貰ったプレゼントとは、比べ物にならない程に。

でも、それは比べるものでは無いのだ。

何故ならあの人は今私の隣には居ない。

それだけが現実だから。


「食事に出掛けよう、良いところを見つけてね。ずっと行こうと思ってたんだ」

「あら、楽しみ。貴方、そう言う店を見つけるの得意だから、期待しちゃう」

「ははは、俺の目に任せろ」

もう作ってあるんだけれどね、そう言わないのは、大人になったから、それとも、嫌われたく無いから気を遣っているのか。

いいえ、本当は気がついてる。

無駄だからだ。

きっと言っても彼は

「そうだったのか、じゃあ今度にしよう。君の手料理に勝るものはないからな」

とでも言うだろう。

そう、台本を読むように。

その台詞が、今このシチュエーションに対して最も効果的だと判断して、そう答えるだろう。

でも、彼はそういった事を、私にしかしない。

彼にとっての「愛している」とは、「その人専用の台本を用意する」と言う事なのだろう。私はそう解釈している。

だから私は「台本を用意してくれるのならその通りに踊りましょう」と、返すのだ。


あの人なら、どうだろうな。

あの人にとって「愛してる」は殆ど無償の物だった。際限が無かった。

誰にでも簡単に言う、求められれば簡単にそう答えて居た。

浮気だとかでは無く、いや、私はあれを浮気と呼ぶが、あの人は相手がそれを本気で求めるなら、男だろうと女だろうと御構い無しに放り投げるのだ。

タチが悪いのが「相手が本気なら、僕も本気で向き合わなくちゃならない」とか言って私の事なんか見向きもせずに走り去ってしまうところだ。あれだけは、今でも許せない。

あの人は今でもそんな事を続けているのだろうか。続けているんだろうな。

あの人があの人のままなら。


「もう5月だと言うのに、まだ寒いな」

「そうねぇ、でも、夏も冬も極端で好きじゃないわ。この、白い灰色、くらいが一番ちょうど良いんじゃないかな」

「白い灰色、か。詩的だね」

私の肩に、着ていたコートをかけてくれる。イギリス紳士役でも練習中なのだろうか。

「あら、ありがとう。大変紳士でいらっしゃるのね」

「ははは、僕はそんな柄じゃないさ。ただ、君の前でだけは格好つけたいんだ」

そう言ってウィンクまでするあたり、本当に凄い人だな、と思うし、そう言うところが本当に好きだと思える瞬間だ。

そんな彼と、来月結婚式を挙げる。

そう、私は結婚するのだ。

何故ならここから先の人生は、あの人と比べなくて済むから。

そんな理由で、と言われるかもしれないが、やっぱりそんなもんなんだと思う。

きっと彼との生活は甘い物だろう、酸味のかけらも無いくらいに。

だから、私は幸せだ。

きっと一番、幸せだ。


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これは苺のアンサー版となります。

自分の考えていた事を書いたのが苺だとすると、その相手は何を考えていたんだろうな、と考えて出来たのがこれです。

なんと言うか、これには主体性が無くて

これ一つが言いたい

訳では無いんですよね。

未練とか、これからの将来とか、好きって感情とか、愛って感情とか、幸せとか、そんな要素を少しづつ入れた感じになります。

別に僕は作家になりたい訳では無いので、誰かを感動させたいとか面白いと思って欲しいとかは全く全然これっぽっちも思ってはいないんですけど、これはそこそこ良くかけてるのでは無いかなぁ、とは思います。

これを読んだあなたが、悪く無いなこれ、と思ってくれたなら幸いです。