御手洗はこちらです。

便所みたいなもんですね。

適当

痛み

折れた鉛筆を削る時に、いつも思うのだ。これは人だと。疲弊し、磨耗し、折れた芯を削り出す。削るたびに短くなる。書けば書くほど丸くなり、また削られて尖りだし、最後は無になる。だとするならばやはり人生とは、その握り締めた鉛筆で何を描くか、なので…

剣の証明者

「すまないな、魔術や魔法など無いのじゃよ。そんなものは」 年老いた男の嗄れた声は、嫌に耳の裏に残る。 「そんな馬鹿な事を言うな!今すぐその首を国に持ち帰るぞ!」 激昂する俺を、慈しむように、憐れむように、濁ったその眼で見て居る老人は、俺の長き…

高速道路

『次のリクエスト曲は、フラワーカンパニーズで深夜高速です。どうぞ』 時速100キロで走るトラックは、激しい豪雨の音にかき消されまいとエンジンを唸らせる。ラジオから流れるその曲は、何年振りだろう、若い頃によく聞いた曲を流している。 「青春ごっこを…

滑稽

夜更け、今日も私は一人公園のブランコに揺られながら考えていた。平々凡々なこの人生に、どれ程の価値があるのか、思いつめていた。子もいなければ、妻もいない、何処から見ても冴えない中年のこの私の人生には、何があるのか。この歳になると全く笑えない…

苺の後味

私は苺が好きでした。甘酸っぱいステキな味がする。あの酸っぱさが、程よく甘さを引き立て、甘いだけでは終わらない、そんな果実。「ただいま」「おかえりなさい、お疲れ様」私はちゃんと幸せだ。間違いなく、幸せだ。しかし、求めた物と、今持っている物は…

僕はあの、苺の甘酸っぱさが苦手だ。 後に残るあの酸っぱさが全て台無しにしているように感じるにもかかわらず、 あれがないと甘いという感覚が際立つことはないのだ。 「愛してる」 なんて月並みな言葉しか口に出せないのも、それほどまでに勇気がなく、そ…