御手洗はこちらです。

便所みたいなもんですね。

時間の首輪

「時計を買ったの」 何時ものように、二人がけのソファの左右を大きく空けて腰を掛ける私達の前に小さな黒い箱を置いた。特に珍しいロゴが入っているわけでも、値の張るブランド品と言うわけでもない。 「珍しいね、普段着けないのに」 貴女が手に持ったマグ…

終焉のディープキス

「ねぇ、夕飯は何にしましょうか」 ソファに座りながらペラリと雑誌を捲る貴女と、冷蔵庫の中身を交互に二度づつ、横断歩道を渡る小学生の如く泳ぎ見た。 「んー、何でもいいよ」 だから私は、少しだけ意地悪をしたくなったのだ。 「質問を変えましょうか。…

ただの更新です。

最近の人生に対する進捗状況でも簡単に纏めておこうかと思いましてこうしてフリック作業に勤しんでおります。 さて、僕はなんだかんだで生きております。一度間違いなくこの命を捨てようと思ったはずで、間違いなく行動にまで移したにも関わらず、まだこうし…

温度

私達の住む街は、海よりほど近い場所にあり、夏はプールで塩素の匂いを嗅ぐよりも、海の潮風を浴びる方が多い程に、海とは身近なものだ。しかし、私は夏の海を見に行くことも、遊びに行くことも殆どしない。観光客が犇めき合い、風情なんてあったものではな…

痛み

折れた鉛筆を削る時に、いつも思うのだ。これは人だと。疲弊し、磨耗し、折れた芯を削り出す。削るたびに短くなる。書けば書くほど丸くなり、また削られて尖りだし、最後は無になる。だとするならばやはり人生とは、その握り締めた鉛筆で何を描くか、なので…

剣の証明者

「すまないな、魔術や魔法など無いのじゃよ。そんなものは」 年老いた男の嗄れた声は、嫌に耳の裏に残る。 「そんな馬鹿な事を言うな!今すぐその首を国に持ち帰るぞ!」 激昂する俺を、慈しむように、憐れむように、濁ったその眼で見て居る老人は、俺の長き…

高速道路

『次のリクエスト曲は、フラワーカンパニーズで深夜高速です。どうぞ』 時速100キロで走るトラックは、激しい豪雨の音にかき消されまいとエンジンを唸らせる。ラジオから流れるその曲は、何年振りだろう、若い頃によく聞いた曲を流している。 「青春ごっこを…

彼女と彼女の日常

「ねぇ、あたしの何処が好きなの」 その質問は今回のソレで72回目だ。この二年と3ヶ月の間で72回、約13日に一回はそう問いかける。それは、貴女がそうして確認をする周期が約二週間前後でやってくると言うことで、つまりは情緒が不安定になる時期であると言…

言えない言葉

「言葉にすると途端に安っぽくなる言葉って、多いよね」 空を舞う髪の先を、指で追いかけては纏め損ねる貴女は、何時も気怠げな目をしている。夕陽はあまりにも赤く、枯れる様な赤に侵食された校舎は、今すぐにでも崩れ落ちそうな気がした。一つの机は、お互…

滑稽

夜更け、今日も私は一人公園のブランコに揺られながら考えていた。平々凡々なこの人生に、どれ程の価値があるのか、思いつめていた。子もいなければ、妻もいない、何処から見ても冴えない中年のこの私の人生には、何があるのか。この歳になると全く笑えない…

苺の後味

私は苺が好きでした。甘酸っぱいステキな味がする。あの酸っぱさが、程よく甘さを引き立て、甘いだけでは終わらない、そんな果実。「ただいま」「おかえりなさい、お疲れ様」私はちゃんと幸せだ。間違いなく、幸せだ。しかし、求めた物と、今持っている物は…

僕はあの、苺の甘酸っぱさが苦手だ。 後に残るあの酸っぱさが全て台無しにしているように感じるにもかかわらず、 あれがないと甘いという感覚が際立つことはないのだ。 「愛してる」 なんて月並みな言葉しか口に出せないのも、それほどまでに勇気がなく、そ…

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