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御手洗はこちらです。

便所みたいなもんですね。

彼女と彼女の日常

「ねぇ、あたしの何処が好きなの」

その質問は今回のソレで72回目だ。
この二年と3ヶ月の間で72回、約13日に一回はそう問いかける。
それは、貴女がそうして確認をする周期が約二週間前後でやってくると言うことで、つまりは情緒が不安定になる時期であると言う事実。
これは私がどれほど愛を囁いても治ることは無かった。
何度先回って伝えても為すすべなく揺れてしまった。
だから、その質問の答えが私と貴女の関係性の中にはない事を知っていた。それでも聞かずにはいられないのは、やはり私達の関係性を客観視してしまう貴女自身の存在なのでしょうね。
なので、私はこの二年と3ヶ月の間同じ解答を出し続けているのだ。

「貴女が、貴女だからよ」

「いつも同じじゃんそれ、もっと具体的に言ってよぉ」

この解答に対して、そうして膨れながら拗ねるのは、36回目。
良くない兆候である。
何故ならば、その解答だけでは満足出来ない状態にあると言う事だからだ。
それだけでは鎮められないのだ。
そして、その質問に対する解答も私は一度も変えたことがない。

「そうね、髪、目、鼻、耳、口、首、肩、鎖骨、腕、肘、手、指、胸、腹筋、臍、局部、腰、臀部、太腿、膝、脛、足首、爪。私は貴女を構成する全ての要素が好きよ、大好きよ。もっと細かく掘り下げても良いのだけれど、少し帰りが遅くなるかもしれないわ。それでも良い?」

「はぁ……。分かった、分かりました、ありがとうございます。私は大変好かれております。本当にどうもありがとう!」

その少し諦めたようで、嬉しそうな顔も、いつもよく見る貴女の表情だ。
だから、最後に一つ、これは絶対に同じ解答を使わないで付け加えるのだ。

「ふふ、その綺麗な唇が大好きよ。キスしても良い?」

「あぁ、もう……。……今は……ダメ……。後でね」

「楽しみにしてるわ」

これで完璧。
これで元通り。
でも、私は知っている。これは根本的な解決にはなっていない事を。
私は今を壊さない為に、口三味線を弾いてとりあえずの蓋を用意しているだけ。
小狡いやり方だと、自分でもよくよく分かっているし、貴女がそれに気がついていない事も分かっている。
でも、まだ私は怖いのだ。
"その"貴女と向き合うには勇気があまりにも足りていない。
だからこうして、壊れないように、壊れなかった過去のリピートを壊れたラジカセが擦りすぎてテープが破れてしまうまで繰り返している。
そして、完全に使い物にならなくなるまで、そう時間がかからない事も、分かってしまっている。

「ねぇ、今度映画に行こうよ。見たかったやつがもうすぐ始まるの」

「いいわね、ジャンルは?」

「えーっとね、サスペンスホラー?ちょっと違うな。ホラーなんだけど、なんかちょっと違う。現実的?って言えばいいのかな。それがサスペンスホラー……?ごめん、言っててわかんなくなっちゃった。とりあえずホラー!」

「ホラーねぇ……。貴女ホラー苦手なのに、好きよね」

「え、でもわかんない?なんかこー、さ。怖いもの見たさって奴だよ。ギャーってなるんだけど、覗きたくなる!みたいなさ」

「ふふ、ぎゃーって、面白いわね。いつも目も耳も塞いで、見ない見ない見ないー、って呟く貴女は本当に可愛いわよ」

「いや、だって怖いんだもん!」

「はいはい、分かったわ。行きましょうね映画」

「あしらわれた、今適当にあしらったよね、根に持つからねあたし」

えぇ、そう。
怖いから一人で眠れない、なんて程のいい言い訳の一つ。
だから貴女は私とホラーを良く見るのよ。

私と眠る為にね。
まぁ、本当に怖いのも知っているけれど。

「可愛いわね、本当に」

「うぅー、嬉しい……けど、なーんかあやされてる気分になるんだよなぁ」

「えぇ、あやしているもの。何も間違ってないわ」

「……いつか絶対叫ばせてやる」

「ぎゃーって?」

「そしてその顔を恐怖に歪ませてやる……」

「ぎゃふん、位ならいつでも言ってあげるわよ」

「あ、今のそれ可愛い、もっかいやって」

「ぎゃふん」

「うわ、それ可愛い……動画撮っていい?」

「ごめんあそばせ、撮影は有料なの、ごめんなさいね。事務所通していただかないと」

「ケチだなー、だからモテないんだよ」

「貴女一人にモテていれば十分よ」

「……今のそれ、良い。すごく良い。もっかいお願い」

「うふ、二度は言わないわ。ケチなので」

「もー!」

自分の長い黒髪が、風と共にはたりはたりと散る。
この日常は、長くはないと知っている。
知ってはいるが、辞めるつもりも無い。
今は、ね。

「ね、お願い。もう一度だけ、言って?」

紅潮した頬でねだる姿は、あまりにも愛おしい。
だから、耳元に唇を寄せて、鼓膜に口付けが出来る程の距離で

「愛してる」

と、だけ。

 

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なんと言うか、特に言う事はありません。今パッと思いついた妄想を文字に起こしただけなので全然面白くないですねこれ。

まぁ、でも僕は常にこんな妄想ばっかしてるオタクですよと言う自己紹介の一つにでもなればいいですかね。

そんな感じでした。

以上です。

 

言えない言葉

「言葉にすると途端に安っぽくなる言葉って、多いよね」

空を舞う髪の先を、指で追いかけては纏め損ねる貴女は、何時も気怠げな目をしている。
夕陽はあまりにも赤く、枯れる様な赤に侵食された校舎は、今すぐにでも崩れ落ちそうな気がした。
一つの机は、お互いの肘を置くにはあまりにも狭く、その距離はあまりにも遠い。

「そうね、例えば」

照らされた貴女のセーラー服のリボンが眩しくて、私は目を閉じてそう問うた。
だから、貴女の顔を私は見ていない。

「好き、とか。愛してる、とか」

陳腐ね、と言いかけて、なるほど確かに安っぽい、だなんて息が漏れた。

「今笑ったでしょ」

「ふふ、ごめんなさい。少しおかしくって。でも、どうして」

「どうしてだろうね」

熱視線、とはこう言う事を言うのだろう。
熱い、熱かった。
燃えるほどに熱かった。
だから、内側から燃え出る前に目を開けてしまったのだ。
その目を見つめてしまったら、もう、逸らすことなんて出来ないと知っているのに。
その感情を、目を閉じて受け止められるほど、私は強くないから。

「そうね、確かに安っぽいけれど、その安さが良いんじゃないかしら」

「なんで」

「あまりにも高い言葉は、富豪にしか使えないじゃない」

「君のそういう例え、大好き」

「あら、知らなかったわ。もう一度言ってもらえるかしら」

「そういう所は、あんまり好きじゃない。好きだけど」

目はあまりにも物を言うから、私は裏の裏まで見つめてしまう。
そんな風に見つめないで。
今日はその目だけで眠れなくなってしまう。
そんな夜は何度目だ。
数えるのも飽きてしまったくらいには、数え続けた夜だった。

「好きだよ」

あぁ、もう。
そう言いながら、逸らすその目の奥まで見えるこの目を潰したい。
この耳を聞かなかったことに出来るなら、この拙い思いが虚しさに変わる前に、貴女と共に泡にでもなりたい。
音になる前から遡って消し炭にでもしてしまいたいのに、その音の元に辿り着く前に、私の蝋で出来た翼は溶けてしまうのだろう。

「私もよ」

それは嘘だ。
貴女のそれを私と同じモノとして扱うにはあまりにも私達は近過ぎて遠い。
酷い感傷に塗れながら、これは幸福の副作用だから、だなんて言えるほど私達はきっと大人じゃない。

「どうして」

「貴女が、貴女だから」

「やめてよ、嫌いだ。その誤魔化し方」

そうやって、誤魔化したいのはどっちなのだろう。

「私が、女じゃなかったらな」

「やめなさい、嫌いよ。その誤魔化し方」

あぁ、酷い顔。
愛おしいその顔、歪みきったその表情。
決して笑ってはいけないと知っているのに、心は愉快が止まらない。
歪んでいるのは私の方だ、醜いと言ってもいい。
むしろ、誰かそうやって私を叱って教育し直してくれるなら金なら幾らでも払ってやろう。良い医者を寄越せ。
この幾ら払っても治らないこの病気は、大人になっていくうちに消えて無くなってしまうのだろうか。
今すぐにでも治療してくれと泣き叫ぶ私が正常なのだろうか、こんな世界にした神様を呪う私が正しさの証明になるのだろうか。
踏み絵なら幾らでもしてやろうじゃないか、ねぇ、神様。
安っぽいと狂い笑いながら、割れるまでその絵を踏みにじってやろう。
それでこの想いが証明できるなら、幾らでも、幾らでも。

「もう、誰も居ないかな」

誰も居ないグラウンドを眺めて、暗くなり始めた空に、遅いよ、と非難を浴びせる。

「そろそろ暗いわ。帰りましょう」

夜は良い、誰にも気付かれずに走り抜けることができる。
どうしてこんなにも認めてもらえないのだろう、なんて嘆く声も、この黒なら吸い込んでくれそうだ。
まるで呪いだ。
きっと吸血鬼はこんな思いで生きていたのだろう。親近感が湧いてしまう。
正しさ、ってなんなんだろう。
正義の剣は、私達にとって銀の杭だ。
撃ち抜かれたら、灰になってしまうから。
なら、私達は悪なのだろうか。正義の味方は、一体誰の、一体何の味方なのだろうか。
この想いが悪だと言うなら、忌避されるべきものだと言うのなら、正義なんて私達には必要無い。
吸血鬼が血を吸わなきゃ生きていけなかったように、私は貴女の愛を吸わなきゃ生きていけない。
だから、私達は太陽の下を歩けない。

校門を出る頃にはもう辺りは暗闇に包まれていた。
貴女は何も言わずに私の細い手首を強く、強く、折れるかと思うくらいに強く握りしめてから、ふっと、諦めたように指を絡める。

「ねぇ、私の事、好き?」

「当たり前じゃない」

「あはは、ありがと、ちょっと元気出た。大好き」

あぁ、これはよくない。
貴女のその顔一つで、全てがどうでもよくなってしまう。

今日はもう眠れそうにない。

 

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久しぶりに乗りに乗って書き出せた感じがあります。

テーマは「正義」でした。

ですが正直それは後付けのものなので、そこに関してはなんとも言えない感じはありますが、言いたいことは言えてるかな、と。

あれですね、百合が書きたかったんですよ、ほんとに。

方向性的にはこう言う百合が大好物なので、その手の作品をお持ちの方はぜひお教え下さい。

 

滑稽

夜更け、今日も私は一人公園のブランコに揺られながら考えていた。平々凡々なこの人生に、どれ程の価値があるのか、思いつめていた。

子もいなければ、妻もいない、何処から見ても冴えない中年のこの私の人生には、何があるのか。この歳になると全く笑えない、可愛げもない悩みを、私はただ一人思いつめていた。


「こんばんは」

青年が一人。

不審者にでも、間違われたのかもしれない。

私は精一杯明るく答えた。

「こんばんは。何か用かい、薬でも分けてくれるのか。生憎私には見たい夢も捨てたい今も無いんだ、他を当たってくれ」

「いえいえ、そんな気は一切ありませんよ。ただ、これを差し上げようと思いまして」

結婚式場のシールが貼られた白い箱を私に手渡してきた。

「毒でも入っているのか?それなら遠慮なくいただこう」

「残念ながら、毒も麻薬も入ってません。中身は普通のショートケーキです」

ブランコに腰掛けると話を続けてた。

「最近、良くここにいらっしゃるでしょう。今日は結婚式がありましてね、これもまた巡り合わせかと思い、一つお話を」

「それは恥ずかしい所を見られてしまっていたな。誰かに見られてるだなんて、気にしたこともなかった」

正直、少し鬱陶しいと思った。

「何か悩みでも、おありですか」

ご注文は以上でお揃いですか?と分かりきったことを聞くウェイトレスと同じ声音だ。

「悩みか、そうだな。私は悩んでいる、考えている」

「そうですか」

彼はそれ以上、何も聞くことは無かった。

だから私も何も話さなかった。

公園に咲く桜はもう殆どが散っていた。その姿は何となく今の自分に似ているな、などとどうでもいい事を考えた。

「この公園、思い出の場所なんですよ」

「へぇ、それは良い思い出なのかな、それとも悪い思い出か」

「良くも悪くも、思い出ですね。ここで、彼女に二度目の別れを告げられました」

「それはとても青春だな。二度目、という所がまたそそる」

「そうでしょうか。でもそうですね、甘酸っぱい大切な思い出です」

「私にはそんな経験がないから、偉そうな事は言えないが、私にもそんな思い出の一つでもあれば、ここには居なかったのかもな」

「でも、僕はここに貴方が居てくれて良かったな、と思いますよ」

私はその言葉に、少しだけ苛立った。

お前に何がわかる、と心の中の自分が叫ぶ。

「そうか、それは良かった」

「でもきっと、貴方は僕から言われても嬉しくはないのでしょうね。それは、よく分かってるつもりではいますよ」

「分かっているなら、なぜわざわざ」

「きっと貴方は何も分かってないからですよ」

心が割れる音がした。

「あぁ、そうだ。私は何もわからない。自分の生きる意味も、明日が来る理由も、私には何もわからない。思春期のような悩みだと馬鹿にしてくれて構わない、もう馬鹿にされることすらないんだ。私の人生には、何もない」

彼はただただ、微笑んでいた。

ただしそれは、慈愛に満ちた表情、では無かったし、蔑んだ嘲笑とも違っていた。

「まだ、あるじゃないですか」

「何があると言うんだ、何もないがあるとでも言いたいのか。それはただの言葉遊びの茶番だ」

「そう叫ぶ貴方が、まだここにいるじゃないですか」

気付かされた、と言うよりは、一本取られた、と言う感覚が近いのかもしれない。

「しかしこれは答えにならない。私は答えが欲しい、意味が欲しい」

「申し訳ありませんが、僕は答えは持っていません。ですが、今日貴方がここに居なければ声をかける事はなかったでしょう。僕が声をかける事がなければ貴方は誰にも叫ぶ事なく、ここで悩み続けたのではありませんか」

「だが叫んでも何も解決はしない」

「そうでしょう、解決するのは僕ではなく、貴方ですから」

「だが私には手段が無い」

「少なくともここで悩む事では何もありませんよ」

「だが……」

何も言えなくなった。

ようやく気がついたのだ、自分の愚かさに。

そんな私を見て、彼は微笑んでいた。

「……あぁ、そうか、そうだな。すまない、そしてありがとう」

「いえいえ、こちらこそ。またこの公園での思い出増えました」

「それは良い思い出なのかな、それとも悪い思い出か」

「良くも悪くも、思い出ですね」

私は大きな声で笑った。

自分でも驚く位大きな声で、鳥が何匹か飛んで行った。

そんな行き過ぎる鳥を見て

「鳥になりたい」

なんて、人生で初めて思ったのだった。

「ありがとう。何もわからなかったし、何も解決はしなかったが、少なくともここには無い事だけはわかったよ」

「でも、ここに居なければ僕は貴方に声をかける事はありませんでした。だから、ここにもきっと、意味があったんですよ」

「あぁ、そうだな。しかし、もう無いな。そろそろ出発の時間らしい。汽笛を鳴らしたのは、君だな」

「そうなれて、光栄です。これもまた人生なのでしょう。出会えて良かったです、それでは、さようなら」

彼はそれだけ言うと、ふらりと消えた。

自分自身が作った幻かとも思ったが、自分の中にそんな自分が居たならここで悩んでなど居なかったか、と一人苦笑した。

彼がくれたショートケーキを口に詰め込み、私はその公園を後にした。

二度と来る事はないだろう。

だが、私はこの味を一生忘れる事はない。

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最初はこれタイトルを「無意味の意味」にしようと思ってたんですが、あまりにもチープすぎて辞めました。そして、そんなタイトルではあまりにもチープ過ぎるなと言うところまで含めて滑稽と言った感じだったので滑稽に。

意味の無い事をしている、と言う事実ってしている最中は全然気がつかなかったりしますよね。

でも、それに気がついた時

なんて時間を無駄にしてしまったんだ

と思うか

あぁ、この無意味に意味を持たせよう

と行動するか

って雲泥の差ですよね、これは多分誰しも、うんうん、と頷いてくれると思う。

そんな感じの話を書こうと思ったんだと思います、このテキストデータを編集しようと思ったら最終更新2014年だったので、当時これをどんな思いで書こうとしたかは全く思い出せないんですけど、一つ言えるのは

僕、あの頃からなんにも成長してねぇ!!!

と言う事ですね。 

苺の後味

私は苺が好きでした。甘酸っぱいステキな味がする。

あの酸っぱさが、程よく甘さを引き立て、甘いだけでは終わらない、そんな果実。


「ただいま」

「おかえりなさい、お疲れ様」

私はちゃんと幸せだ。間違いなく、幸せだ。

しかし、求めた物と、今持っている物は違っている。

でも、人生なんてそんなもので、大人になると言うのは、別の物でもそれなりに満足できるようになる事なんだろうな、と悟ったふりをしてみたりする。

私は、そんな私で満足している。

何故なら、大人になったから。

「はい、コレ。プレゼント」

「わぁ、ありがとう」

「君によく似合うと思ってね、つい買ってしまったんだ」

彼は事あるごとにプレゼントを買ってきてくれる。それはとても価値のある事で、私はそれがとても嬉しかった。

でも、あの人なら、とつい思ってしまう時がある。

「高かったんじゃない、ごめんね、別に良かったのに」

ありがたそうに、それでいて当然のようには受け取らない。大人になるにつれ、学んだ処世術の一つだ。

「俺が君にしたかったんだよ、気にしないでくれ」

とても優しい人だ。

優しくて優しくて、私には勿体無いくらいに甘い。

「ありがとう」

そう笑う私は、ちゃんと笑えているかな。昔のように、嫌な笑顔になっていないかな。

あの人は、今ちゃんと笑えているかな。

「愛してるよ」

「私も」

これは嘘だ、確かにちゃんと好きではあると思う。でもきっと、愛してはいない。

お互いにそれにはきっと気付いてる。


あの人とは言うものの、これはただの元彼への未練なのだろう。でも私はあの人をそう呼びたくは無かった。何故だろうな、わからないけど「元彼」なんてカテゴリーに彼を入れるのはあの人に対してでは無く、自分が許せないのかもしれない。

酷く傷つけあった感傷と、溺れるほど愛し合った思い出と、今でも忘れられない事実だけが私に残っている。それだけは、捨てようにも捨てられなかった。

未練がましい、と言われても構わない。

私はそう言う物として扱っている。

あの人はプレゼントなんて、数えるくらいしかくれなかった。私はその3倍は渡したように思う。

でも、だからかな。

その一つ一つがとても嬉しかった、今貰ったプレゼントとは、比べ物にならない程に。

でも、それは比べるものでは無いのだ。

何故ならあの人は今私の隣には居ない。

それだけが現実だから。


「食事に出掛けよう、良いところを見つけてね。ずっと行こうと思ってたんだ」

「あら、楽しみ。貴方、そう言う店を見つけるの得意だから、期待しちゃう」

「ははは、俺の目に任せろ」

もう作ってあるんだけれどね、そう言わないのは、大人になったから、それとも、嫌われたく無いから気を遣っているのか。

いいえ、本当は気がついてる。

無駄だからだ。

きっと言っても彼は

「そうだったのか、じゃあ今度にしよう。君の手料理に勝るものはないからな」

とでも言うだろう。

そう、台本を読むように。

その台詞が、今このシチュエーションに対して最も効果的だと判断して、そう答えるだろう。

でも、彼はそういった事を、私にしかしない。

彼にとっての「愛している」とは、「その人専用の台本を用意する」と言う事なのだろう。私はそう解釈している。

だから私は「台本を用意してくれるのならその通りに踊りましょう」と、返すのだ。


あの人なら、どうだろうな。

あの人にとって「愛してる」は殆ど無償の物だった。際限が無かった。

誰にでも簡単に言う、求められれば簡単にそう答えて居た。

浮気だとかでは無く、いや、私はあれを浮気と呼ぶが、あの人は相手がそれを本気で求めるなら、男だろうと女だろうと御構い無しに放り投げるのだ。

タチが悪いのが「相手が本気なら、僕も本気で向き合わなくちゃならない」とか言って私の事なんか見向きもせずに走り去ってしまうところだ。あれだけは、今でも許せない。

あの人は今でもそんな事を続けているのだろうか。続けているんだろうな。

あの人があの人のままなら。


「もう5月だと言うのに、まだ寒いな」

「そうねぇ、でも、夏も冬も極端で好きじゃないわ。この、白い灰色、くらいが一番ちょうど良いんじゃないかな」

「白い灰色、か。詩的だね」

私の肩に、着ていたコートをかけてくれる。イギリス紳士役でも練習中なのだろうか。

「あら、ありがとう。大変紳士でいらっしゃるのね」

「ははは、僕はそんな柄じゃないさ。ただ、君の前でだけは格好つけたいんだ」

そう言ってウィンクまでするあたり、本当に凄い人だな、と思うし、そう言うところが本当に好きだと思える瞬間だ。

そんな彼と、来月結婚式を挙げる。

そう、私は結婚するのだ。

何故ならここから先の人生は、あの人と比べなくて済むから。

そんな理由で、と言われるかもしれないが、やっぱりそんなもんなんだと思う。

きっと彼との生活は甘い物だろう、酸味のかけらも無いくらいに。

だから、私は幸せだ。

きっと一番、幸せだ。


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これは苺のアンサー版となります。

自分の考えていた事を書いたのが苺だとすると、その相手は何を考えていたんだろうな、と考えて出来たのがこれです。

なんと言うか、これには主体性が無くて

これ一つが言いたい

訳では無いんですよね。

未練とか、これからの将来とか、好きって感情とか、愛って感情とか、幸せとか、そんな要素を少しづつ入れた感じになります。

別に僕は作家になりたい訳では無いので、誰かを感動させたいとか面白いと思って欲しいとかは全く全然これっぽっちも思ってはいないんですけど、これはそこそこ良くかけてるのでは無いかなぁ、とは思います。

これを読んだあなたが、悪く無いなこれ、と思ってくれたなら幸いです。


 

僕はあの、苺の甘酸っぱさが苦手だ。

後に残るあの酸っぱさが全て台無しにしているように感じるにもかかわらず、

あれがないと甘いという感覚が際立つことはないのだ。

 

「愛してる」

なんて月並みな言葉しか口に出せないのも、それほどまでに勇気がなく、その程度の自信しか持ち合わせてなどいなかったからだ。

「ありがとう。嬉しい」

彼女の表情はとても嬉しそうで、まるで一番欲しかったおもちゃを、誕生日に買い与えてもらった子どものような表情だった。

僕はその表情をずっと見ていたくて

「あの頃から、ずっと君のことが好きだった。今もずっと変わらずに」

「私も大好き、本当に、本当に」

かみ締めるように。

「楽しかったね、あの時に行った水族館、また行きたいね」

「えぇ、本当。私、あの青く暗い場所、すごく好き。自分の知らない世界に溶け込んでる気分になるの」

昔に聞いた、同じ台詞。

「でも、次は海まで行こうか。もっと青く、もっと澄んでると思うよ」

「そうね、とっても楽しみ」

彼女は何も変わらない、無邪気な笑顔を崩すことは無い。

「そうだ、君が行きたいって言っていた、あの場所へ行こう。あの頃は行けなかったけれど、今なら、今すぐにでも行けるよ」

彼女はその言葉に微笑んだまま、何も言わなかった。

だから、その時僕は苺みたいだ、なんて思ってしまったのだ。

何も言えない僕と、何も言わない君。

このままずっといられたら、と思う自分と、誰でも良いからこの静寂を破り捨ててくれ、と叫びだしたくなる自分はどちらが本音なのだろうか。

しかし、どんなものにも終わりが来るのだ。

「私ね、結婚するの」

知っていた、知っていて僕は君と会ったのだ。

「ちゃんと幸せに、なれるかなぁ。今の私は、ちゃんと幸せに見えるかなぁ」

僕はその顔を見ていない。

「うん、今の君は、とっても奇麗だよ」

あの頃から、見違えるくらいに。

そう言えない僕は、なんて臆病者なんだろう。

「えへへ、ありがとう」

まだ、僕はその顔を見ていない。

「あのさ」

「ん?」

その何でもないやり取りが、一番僕の胸を引き裂いた。

だから僕は

「ごめん、なんでもない」

「えー、なにそれ」

そんな風にお茶を濁すのだった。

小さな、僕らがよく知る公園のブランコ。

君はよく

「もうお尻が入らないの」

なんて、照れくさそうに笑っていた。

 

「ねぇ」

「なぁに」

ブランコをゆらゆらと揺らす彼女は、あの日と何も変わっていないように見えた。

「最後に、僕に言うことはある」

その質問に対して、君は考えてる様にも、この時間を惜しんでいるようにも、見えなかった。

ただ彼女は、ずっと、微笑んだまま僕を見つめていた。

僕は、君が次になんと言うか、考えるフリだけして、実はわかってしまっていたし、わかっていたからフリでもしていなければ、ここに立っている事すらままない。

風が君の香りを運ぶ。それは初めて君から香る匂いで、苺の香りがした。だから僕は思わず苦笑いを零してしまったのだ。

それを見た君は、まるで初めて来た街で

「目的地はこっちだったかしら」

とでも言うような素振りで、キスが出来るくらいの距離まで近づくと

「さようなら」

と、それだけ。

 

あぁ、そうだ。

僕はその一言が欲しくて、その一言が途方もなく酸っぱいことを知っているのに、求めてしまったのだ。

あの甘き日々と別れを告げるために。

 

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これから、こうして後書きみたいなものを書いて行こうかな、と思ってはいるんですけど、これについては

今の感情を必ず何かに残そう

と思った時があって、それを簡単に説明しようと思ったらこんな感じになりました。

まぁ、恋愛ってよくよくこんな感じになりますよね、ちなみに言うとこれを書いた時のテーマがスイーツだったんですよ。

なのでスイーツ(笑)みたいな感じに書ければなぁと思ったらこんな感じになりましたね。

うわぁ、スイーツ(笑)……となって頂ければ間違いなくテーマに沿ったものがかけてるはずなので悪くないんじゃないかなぁ、と。

後これは30000回くらい言わせて頂きますが、フィクションです。

実在の人物とは全く関係の無いものですので、あしからず。